座布団は、日本の生活様式になくてはならないもので、茶道や座禅など伝統文化と密接な関係にあり、お互いに影響しあっています。禅寺での座禅修行や行事で座布団の上に座ることがあります。また、僧侶は長時間にわたり読経や説法を行う際に座布団に座ります。
茶道を行なう茶室は畳が敷かれた和室であり、座布団を使うことがあります。
座布団は古代から現代に至るまで、日本の伝統文化や生活様式に深く根ざしているといえるでしょう。
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日本における座布団と伝統芸能
座布団は、日本の伝統芸能や芸道、儀式においても重要な位置づけにあります。
茶道
日本の伝統的な茶の湯の儀式である茶道。座布団は、茶道でも使用されます。
茶道では、茶を点てたり、お菓子をいただいたりする間、茶人・客人ともに正座が基本です。両脚を揃えて膝を折って座る正座には礼節や誠意を示したり、心身を整えたりする意味があります。一方で、長時間、脚を折り畳んでいると疲れたり脚がしびれたりしますので、座布団を敷くことで座り心地がよくなり、儀式に集中しやすくなります。
畳の上に直接座る場合もありますが、とりわけ客人をもてなすものとして座布団が使われます。この心配りによりお互いの心理的な距離が近づき、茶会が和やかで円滑なものになります。
歌舞伎
日本の伝統的な演劇である歌舞伎では、客席に座布団が敷かれます。観客は座布団に座って観劇しますが、座布団の配置は演出や役者との距離感を考慮したものになっています。
能楽
能楽は能舞台と呼ばれる特別な舞台で演じられますが、やはり客は座布団に座って公演を鑑賞します。
落語
落語は噺家が観客に向かって物語を語る演芸です。落語の客席には座布団が敷かれますが、噺家が座る高座には、とりわけ大判の、めおとばん(夫婦判)が置かれます。これは舞台演出の一つであると同時に、身振り手振りをする噺家を受け止める緩衝材でもあります。
噺家は、喜怒哀楽を表現するために座布団を叩く「座布団返し」(ざぶとんがえし)を行います。噺家は座布団返しへの観客の反応を見ながら、客と息を合わせるようにして演目の調子をとっています。
また、噺家は限られた小道具とともに一人で何役もこなし、座ったままで体の向きを変えたり倒れ込んだりします。そのため、あまりに座布団が小さいと、はみ出してしまう可能性があります。
ちなみにテレビ番組『笑点』の人気コーナー「大喜利」では、出演する落語家は、座布団の上に座ります。興味深いことを言うと座布団が1枚ないしそれ以上与えられます。逆に下らないことを言うと座布団が没収されます。そして座布団が10枚に到達すると祝福されて賞品を獲得する仕組みになっています。
座布団は落語における重要な舞台装置の一つといっていいでしょう。
大相撲
日本の格闘技、相撲は単なる競技ではなく神事とされています。相撲でも、観客は座布団に座って観るのが基本です。土俵の高さは約55 cmですので、椅子に座って観戦すると土俵が隠れて後ろの方では視界が遮られてしまいます。また、土俵の間近にまで座布団が敷かれていますので、投げられた力士が観客の上に落ちてくることがあり、迫力が満点です。また、番狂わせが置きた際には座布団がその場の雰囲気を盛り上げます。力士には格付けがあり、例えば平幕の力士が横綱を破る大金星を挙げた際に観客は手元にある座布団を投げて空中で回転させます。ひいきの力士が敗れた落胆の意思表示をする場合もありますが、概ね勝った力士を称賛する意味があります。
これは「座布団の舞」と呼ばれますが、近年では安全上の理由から座布団を投げないように自制を求めるアナウンスがなされる場合がありますが、罰金や制裁が科されるようなことはありません。
江戸時代(1603年~1868年)や明治時代(1868年~1912年)には、日本の伝統的な上着である、はおり(羽織)を投げる習慣がありました。羽織には名前が書かれており、それを受け取った力士が羽織の持ち主に届けると「ご祝儀」を貰えるという仕組みでした。「投げ花」と呼ばれる行為で、「祝儀を投げる」という意味がありました。
明治42年(1909年)に初代両国国技館がこけら落としされると「投げ花」が禁止されました。「座布団の舞」は「投げ花」の名残かもしれません。興奮して思わず物を投げるのは、おそらく相撲という競技が始まった古代の頃からあった人間の衝動的な行為でしょう。
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著者:長田拓也 Takuya Nagata. Amazon Profile
Follow @nagatackle小説作家、クリエーター。英国立大学UCAを卒業。卒業論文では、日本のミニマリズムについて論じた。エコロジーやライフスタイル等、社会の発展に寄与するアート・ムーブメント『MINIRISM』(ミニリズム)の創設者。後にナレッジハブ「The Minimalist」(ザ・ミニマリスト)をオープン。
かつてブラジルへサッカー留学し、リオデジャネイロにあるCFZ do Rio(Centro de Futebol Zico Sociedade Esportiva)でトレーニングに打ち込む。日本屈指のフットボールクラブ、浦和レッズ(浦和レッドダイヤモンズ)でサッカーを志し、欧州遠征。若くして引退し、単身イングランドに渡った。スペイン等、欧州各地でジャーナリスト、フットボールコーチ、コンサルタント等、キャリアを積む。ダイバーシティと平等な社会参加の精神を促進する世界初のコンペティティヴな混合フットボール「プロプルシヴ・フットボール」(プロボール)の創設者。
クリエーティヴ系やテクノロジー畑にも通じる。スペース カルチャー & エンターテインメント ハブ『The Space-Timer 0』をローンチ。
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