「茶の湯」という通り、茶室には湯を沸かすことが欠かせません。
夏季は、熱がこもらないようにするため、炉は切らずに客人から遠い風通しのよい場所に「風炉」を置きます。日本の夏は非常に暑くなるため、熱が室内にこもらないようにする工夫ですが、冬はとても気温が下がります。そこで冬季は、畳を切って埋め込んだ「炉」を使用します。
畳や床に埋め込むように炉を切りますが、炉縁を設置してその内側に入れる四角い箱のような部分を「炉壇」(炉段)といいます。炉壇に灰を敷き、五徳を置き、その上に釜がきます。
伝統的な炉は、檜の箱の側面を土で覆った「炭櫃」(巣櫃、素櫃)で、「本炉壇」とも呼ばれます。一辺は一尺四寸(約42.42cm)くらいです。土が塗られた箇所は毎年、塗り直されます。
炉には、鉄、石、陶器といった素材が用いられます。火をつける燃料は木炭です。薪は、煙が多く出るため茶室には向きません。なお、日本建築は木造が基本で、茶室も例外ではありません。そのため、火災で焼失したり、後に再建されたりした茶室もあります。
茶室にとって重要な炉は、人間そのものにとっても重要です。人は火を操ることで、大きく進歩しました。火は、煮炊きを可能にし、動物から身を守る手段でもありました。また、火で暖をとることで寒冷地にも進出できるようになりました。人類は長い間、火のある風景を見てきたのです。
火を囲んで宴が行われ、祭事が催されました。火は人にとって原始の時代から神聖なものでした。その名残は今日、世界各地にある祭りに見ることができます。
夜の暗がりに灯る力強くも柔らかい火の光や、火の粉を散らしながら赤く焼け焦げた木が弾ける音は幻想的です。炉は、人の原体験に通ずると言えるのではないでしょうか。
茶室の炉は、基本的に湯を沸かすためのものです。冬には暖をとるのにも役立ちます。しかし、それだけではありません。炉は茶室に息吹を吹き込み、人間の魂に火を灯すのです。
著者:長田拓也 Takuya Nagata. Amazon Profile
Follow @nagatackle小説作家、クリエーター。英国立大学UCAを卒業。卒業論文では、日本のミニマリズムについて論じた。エコロジーやライフスタイル等、社会の発展に寄与するアート・ムーブメント『MINIЯISM』(ミニリズム)の創設者。欧州各地でライターとして様々な分野で活動し、後にナレッジハブ「The Minimalist」(ザ・ミニマリスト)をローンチ。
かつてブラジルへサッカー留学し、リオデジャネイロにあるCFZ do Rio(Centro de Futebol Zico Sociedade Esportiva)でトレーニングに打ち込む。日本屈指のフットボールクラブ、浦和レッズ(浦和レッドダイヤモンズ)でサッカーを志し、欧州遠征。若くして引退し、単身イングランドに渡った。スペイン等、欧州各地でジャーナリスト、フットボールコーチ、コンサルタント等、キャリアを積む。クリエーティヴ系やテクノロジー畑にも通じる。ダイバーシティと平等な社会参加の精神を促進する世界初のコンペティティヴな混合フットボール「プロプルシヴ・フットボール」(プロボール)の創設者。
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