草庵の茶室とは

草庵の茶室とはデザイン

夏季に軽く風呂に入り、その後に飲食を行う習慣である「淋汗の茶」の茶屋に「草庵の茶」の原型が見られます。

初期の茶屋は喫茶だけではなく、酒宴など多目的に用いられました。「草庵の茶室」は茶事に特化した建築です。唐物をもてはやした初期の格式高い「書院造の茶室」とは対照的に、自由な発想に基づいた建築で、高尚な構図から竹など一般にごくありふれた素材まで様々なものを組み合わせ、格式を重んじない作法にも寛容でした。直線的に成形せずに、素材の自然の形状をそのまま活かす試みも見られ、面皮柱や丸太柱、土壁がよく用いられました。

「草庵の茶室」は、日本建築や日本的な美意識の完成形といっても過言ではないでしょう。それは極小ながら大きな広がりを感じさせ、簡素ながら繊細で、心をなごませつつも精神に張りをもたらす洗練されたものでした。草庵化は、日本化と言い換えることもできるかもしれません。

草庵茶室の発展

「草庵の茶」は「侘び茶」ともいいます。室町時代(1336年~1573年)の僧だった村田珠光は、茶人としても高名で「侘び茶」の創始者といわれています。その後、堺の豪商として戦国時代に名を馳せた武野紹鷗が、さらに発展させ四畳半の茶室を確立させました。そして武野紹鷗の弟子だった商人の千利休が、二畳から一畳台目の極小の茶室を模索し、戦国時代の末期に完成させました。茶聖とも形容される千利休は、茶室を高級品で飾り立てることを好まず、自分で竹茶杓や茶碗をこしらえ、真心を込めて客人をもてなすことに重きを置きました。

丁度その時期は、桃山美術が花開いた安土桃山時代と重なります。現在にまでつながる草庵茶室の成立と桃山美術の興隆が同時期に起こったことは、偶然の一致ではないでしょう。(茶室と桃山文化

「草庵の茶室」は、都会で山河の自然を感じることができる「市中の山居」という世界観を体現したものです。この趣は、都市化が進んだ現在の私たちの心にも響くものがあります。

草庵の茶室は、お互いの心を直に通わせる「直心の交」をコンセプトにした空間設計がなされています。そのため、「一畳半」(一畳台目)までスペースを狭め、亭主と客の距離を近くする意図があります。千利休が、二畳から一畳台目にさらに狭め、最小の茶室をつくったといわれています。おのずと、客の人数は一人ないし数人になります。

極端に狭い入り口「躙口」を通るには、身分の高い武士であっても刀を身体から外し、踏石から頭をかがめて敷居に手を置きくぐる必要があります。この関門に躙りいる際は、小さく一礼するのが習わしになっています。

戦乱の世で力がものをいった縦社会の時代にあり、茶室の中では誰しもが対等でした。小さな躙口から広がる空間に入るという特別な体験を経ることで、茶室が非日常の場であることを体感します。茶室は単にお茶を飲む場所ではなく、特別なコミュニケーションをとる空間なのです。

封建制の時代、日本の社会には厳格な身分制度がありましたが、文化を嗜む場では時に例外を見ることができます。例えば、身分を越えた相撲大会がありました。また、武術で男性優位が当たり前とされた当時、弓道の場においては男女の区別がなされていない場合がありました。

「草庵茶室」の完成を見た後に「草庵風茶室」が「書院風茶室」と融合した中間のものが登場し、座敷飾りといった装飾を施すことも行われるようになり、幅広く茶会も催されました。

著者:長田拓也 Takuya Nagata. Amazon Profile

小説作家、クリエーター。英国立大学UCAを卒業。卒業論文では、日本のミニマリズムについて論じた。エコロジーやライフスタイル等、社会の発展に寄与するアート・ムーブメント『MINIЯISM』(ミニリズム)の創設者。欧州各地でライターとして様々な分野で活動し、後にナレッジハブ「The Minimalist」(ザ・ミニマリスト)をローンチ。

かつてブラジルへサッカー留学し、リオデジャネイロにあるCFZ do Rio(Centro de Futebol Zico Sociedade Esportiva)でトレーニングに打ち込む。日本屈指のフットボールクラブ、浦和レッズ(浦和レッドダイヤモンズ)でサッカーを志し、欧州遠征。若くして引退し、単身イングランドに渡った。スペイン等、欧州各地でジャーナリスト、フットボールコーチ、コンサルタント等、キャリアを積む。クリエーティヴ系やテクノロジー畑にも通じる。ダイバーシティと平等な社会参加の精神を促進する世界初のコンペティティヴな混合フットボール「プロプルシヴ・フットボール」(プロボール)の創設者。
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