茶室と自然の関係

茶室と自然の関係デザイン

茶室とは人と自然が接する場所。都会であっても基本的に茶室には路地と呼ばれる庭がついています。むしろ、都会だからこそです。田舎では自然豊かな場所が茶室の立地に好まれます。

茶室とは、自然なしに語ることができず、切っても切れない仲なのです。それは、まるで赤子と母親の関係に例えることができるでしょう。

新生児は、母親と自分の区別をしないといわれています。母親は、切り離すことができない自分の一部だと認識しているのです。無論、母体の中では、へその緒でしっかりと繋がって、母親に依存し酸素や栄養の供給を受けると同時に、羊水の中を泳ぎながら母親の動きを感じ、母親の声に耳を傾けています。

人にとっての茶室の存在とは、まるで胎児にとっての子宮のような存在だとはいえないでしょうか。非常に狭く手脚を折り曲げる必要がありながら、無限の空間につながっているのです。赤ちゃんは子宮の中で、母親を自分のものとして感じています。胎児にとって、母体とは全てで自然そのものです。あらゆるものと母体を介して接するのです。

赤子は誕生後、誰にも教わらなくても乳を飲む術を備えています。それは、赤子にとって一度は分離された母体と繋がる体験、まさに本能。

狭い躙口から這いつくばって小さな茶室に入る行為は、まるで産道を遡って子宮に戻るような体験で、人の帰巣本能をくすぐります。

人が茶室を求めるのは、本能に基づいているのではないでしょうか。先人の知恵を積み重ねて造られた、日本の文化の結集ともいえる茶室。しかし、それは単なる理詰めの世界ではなく、人に内在する原始の本能を呼び起こすものでもあるのです。

人は茶室に入り、無限の自然空間を感じます。そうでなければ茶室とはいえないのです。茶室に人々が心を和ませるのは、誰しもが持つ原体験に通ずるところがあるからではないでしょうか。いや、むしろ茶室は人間の原体験を再現しているといっても過言ではないでしょう。

著者:長田拓也 Takuya Nagata. Amazon Profile

小説作家、クリエーター。英国立大学UCAを卒業。卒業論文では、日本のミニマリズムについて論じた。エコロジーやライフスタイル等、社会の発展に寄与するアート・ムーブメント『MINIЯISM』(ミニリズム)の創設者。欧州各地でライターとして様々な分野で活動し、後にナレッジハブ「The Minimalist」(ザ・ミニマリスト)をローンチ。

かつてブラジルへサッカー留学し、リオデジャネイロにあるCFZ do Rio(Centro de Futebol Zico Sociedade Esportiva)でトレーニングに打ち込む。日本屈指のフットボールクラブ、浦和レッズ(浦和レッドダイヤモンズ)でサッカーを志し、欧州遠征。若くして引退し、単身イングランドに渡った。スペイン等、欧州各地でジャーナリスト、フットボールコーチ、コンサルタント等、キャリアを積む。クリエーティヴ系やテクノロジー畑にも通じる。ダイバーシティと平等な社会参加の精神を促進する世界初のコンペティティヴな混合フットボール「プロプルシヴ・フットボール」(プロボール)の創設者。
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