扇子は、機械を用いて大量生産が行われるようになっています。しかし現在でも、高級扇子は職人が1本1本、手で作っています。
細部にまでこだわり抜いた職人芸は、やはり違います。伝統的に扇子の製作は、熟練した職人の手作業です。
扇子には、88の工程があるともいわれています。大まかに分けると「扇骨」「地紙」「つけ」の3つの工程があります。
もう少し細かく分けると「骨作り」「紙加工」「上絵」「折り加工」「つけ」の5つの工程になります。
実に細かい多くの工程があります。
扇子の工程
骨の製作では、木や竹といった骨の素材を選定します。扇子の骨は、強度としなやかさが求められます。竹は3年~5年の若いものが好まれます。数多くある竹の品種によって特徴が異なるだけではなく、同じ竹でも部位によって特徴が異なります。
また、竹の加工状態によっても違いが出てきます。
しらたけ(しろたけ:白竹):
伐採したばかりの青竹を油抜きし、天日で乾かしたものです。
すすだけ(煤竹):
藁葺き屋根の古民家天井や屋根裏の素材として使われていた竹です。囲炉裏から昇る煙で燻された味わいのある質感があります。
そめだけ(染竹):
染料を用いて白竹を染色したものです。にぐろめ(煮黒:竹を煮て黒く染色したもの)や、からきぞめ(唐木染:唐木色に染めたもの)があります。
「扇骨」 3-1 | 「骨作り」 5-1
加工:
竹林で扇子に適した竹を伐採します。
扇子のサイズに合うように適宜、竹の胴を切断する「どうぎり」(胴切)を行います。
扇子のサイズに合うように竹をなた(鉈)で割く「わりたけ」(割竹)を行います。適宜、青竹を煮沸で油抜きして、天日で乾かします。
割竹を三枚に割いて薄く削ぐ「せんびき」(せん引)を行います。内側の白い部分(腹竹)と外側の表皮を除き、その間のカワ(皮竹)の部分が扇骨の主なる素材になります。
なお、はらたけ(腹竹)は、安価な扇子に使用される場合があります。
要をはめる穴をあける「めもみ」(目もみ)を行います。
扇骨を成型し細工を施す「あてつけ」を行います。無数の扇骨を重ねて要穴に竹棒を通して、一度に多くの扇骨をノミや包丁といった刃物で削って形を整えます。
皮竹の扇骨は、日光に当てて干す「しらぼし」(白干し)を行います。片面に2日、両面に4日を要します。天日にさらすことで、白竹の色味が白くなり安定します。腹竹は元々、白く不純な色がないため、しらぼしは特に必要ありません。高級扇子を作るには、素材の段階ですでに工数が多いことが分かります。
扇骨を滑らかに磨き、細工を施す「みがき」(磨き)を行います。
白竹のまま使用するのが主流ですが、扇骨に染料で色付けする場合もあります。釜茹での場合は「染め」、刷毛を用いる場合は「塗り」といいます。
「塗り」には「赤黒」「黒塗り」「溜め塗り」などがあり、つやがあり主に女性用です。
かみせん(紙扇)の場合は、要を通す「かなめうち」(要打ち)を行います。中骨を親骨で挟み、要穴に小さな円筒を挿入し固定します。
紙の間に入れる中骨を先端にかけて細く薄く削る「すえすき」(末削)を行います。
ただし、絹扇の場合は、扇面に中骨を通す「なかつけ」(中附け)を行ってから「かなめうち」(要打ち)を行います。
「地紙」3-2 | 「紙加工」 5-2
3枚の紙を貼り合わせます。後々の中差しの工程で紙が破れてしまわないように、糊加減をうまく調整します。扇子の糊は、伝統的に姫糊ですが、現在ではその他の糊も使われています。作業を行う日の気温や湿度に応じて、水を加えて糊の濃度を微調整します。
そして乾燥させます。
扇面に使う紙は、芯紙に皮紙(表・裏)を貼り合わせ3層になっています。芯紙は皮紙より薄手です。素材は主に和紙です。和紙は繊維が長く耐久性があります。舞扇子の場合は5枚か7枚を貼り合わせることもあります。
紙を扇面型に合わせて切り取ります。この工程を「かみあわせ」(紙合わせ)、または「あわせ」(合わせ)といいます。
この扇形の紙を「ぢがみ」(地紙)といいます。一度に複数の地紙をまとめて裁断することもあります。
「上絵」 5-3
絵付け(加飾):
適宜、ぢがみ(地紙)に刷毛で色を塗る、色引きを行います。
適宜、金箔や銀箔を糊で扇面に付ける、はくおし(箔押し)を行います。
適宜、扇面に絵を描く「うわえ」(上絵)を行います。扇面が開閉した際に絵が滲まないように、絵の具と膠(にかわ)を絶妙に配合させます。また、扇面の凹凸が変化した際に、どのように観えるかも考慮して絵柄の配置や色調を決めます。
適宜、型刷りを行い、版画を扇面に摺ります。伝統的なものは主に木版画摺り(もくはんがずり)です。
「折り加工」 5-4
折り目をつける「おり」(折り)を行います。湿らせた地紙を表裏から厚手の型紙で挟んで、折り目を付けます。型紙には美農紙が使われます。折りを揃えて叩き、板に挟んで折り目が定着するまで3日以上寝かせます。
紙に細い竹の棒か竹べらで穴を開ける、中差しを行います。この穴は、中骨を差し込むためのものです。
扇面を折り畳み、裁断用の枠に入れて万切包丁で切って揃えます。これを「まんぎり」(万切)といいます。一度に複数の地紙をまとめて切り揃えることもあります。
「つけ」 3-3 | 「つけ」 5-5
適宜、なかぼね(中骨、仲骨)に香水を染み込ませます。
中骨を通す穴を開けますが、これを「なかざし」(中差し)といいます。
折り目のついた部分に中差しで開けられた穴に息を吹き込み広げる「じぶき」(地吹き)を行います。これは、中骨を差し込みやすいようにするためです。
中骨に水糊を塗って蛇腹部分の穴に丁寧に差し込んでいきます。これを「なかつけ」(中附け)といいます。
中骨がヒダの中央に来るように微調整をしてから乾燥させます。
糊を吸って膨張した地紙を折り畳んで拍子木で打って潰す「こなし」を行います。
扇子の形を整える「まんりきがけ」(万力掛け)を行います。厚手の扇面は板で挟み込み、上から重しをのせます。
親骨を火で加熱して内側に曲げる「ため」(矯め)を行います。
中骨を両側から挟む大きな骨である親骨を熱して内側に少しだけ曲げ、一晩かけて形を安定させます。こうすることで扇子を開閉する際に、こしのある感触が得られ軽快な音が出ます。この音が響くと、粋な雰囲気になります。
曲げた親骨の先端を切り落とす「さきづめ」(先づめ)を行います。
中骨を挟むように両側に親骨を付ける「おやあて」(親あて)を行います。親骨に糊をつけて地紙と接着します。
せめ(責)という帯で扇子を固定して乾燥させます。
完成
これで扇子が完成です。
なお、京都の京扇子が複数の職人が手分けする分業制です。それに対して、江戸(東京)の江戸扇子は、ほぼ全ての工程を1人の職人が行う傾向があります。
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著者:長田拓也 Takuya Nagata. Amazon Profile
Follow @nagatackle小説作家、クリエーター。英国立大学UCAを卒業。卒業論文では、日本のミニマリズムについて論じた。エコロジーやライフスタイル等、社会の発展に寄与するアート・ムーブメント『MINIRISM』(ミニリズム)の創設者。後にナレッジハブ「The Minimalist」(ザ・ミニマリスト)をオープン。
かつてブラジルへサッカー留学し、リオデジャネイロにあるCFZ do Rio(Centro de Futebol Zico Sociedade Esportiva)でトレーニングに打ち込む。日本屈指のフットボールクラブ、浦和レッズ(浦和レッドダイヤモンズ)でサッカーを志し、欧州遠征。若くして引退し、単身イングランドに渡った。スペイン等、欧州各地でジャーナリスト、フットボールコーチ、コンサルタント等、キャリアを積む。ダイバーシティと平等な社会参加の精神を促進する世界初のコンペティティヴな混合フットボール「プロプルシヴ・フットボール」(プロボール)の創設者。
クリエーティヴ系やテクノロジー畑にも通じる。スペース カルチャー & エンターテインメント ハブ『The Space-Timer 0』をローンチ。
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